カテゴリ「掌編」に属する投稿[27件](3ページ目)
マニと最後の選択の話 #マニ
神が生まれることを知った。現在機械を司る《機械のマニ》は信者も少ない。このままでは神の座を奪われてしまうであろうマニは、助けを求めあなたへ手を伸ばした。
「*プレイヤー*よ、手を貸してくれないか」
あなたはマニを……
→助ける
マニを見捨てることなど出来なかった。あなたは差し出されたマニの手を取り、かつて彼から賜った古の散弾銃を握らせた。
「今度はお前に守られる側になるとはな」
信者の数は少なくとも、信仰心は負けてはいない。マニは愛銃――ウィンチェスター・プレミアムを誇らしげに構えた。
→見捨てる
一度マニを信仰していたとはいえ、今更彼に荷担する必要性を全く感じなかったあなたはマニの手を振り払った。新たな神を信仰すればより良いアーティファクトが貰えるかもしれない。――マニは邪魔だ。
「……そうか。残念だ」
あなたはマニのかつての愛銃を誇らしげに構えた。畳む
神が生まれることを知った。現在機械を司る《機械のマニ》は信者も少ない。このままでは神の座を奪われてしまうであろうマニは、助けを求めあなたへ手を伸ばした。
「*プレイヤー*よ、手を貸してくれないか」
あなたはマニを……
→助ける
マニを見捨てることなど出来なかった。あなたは差し出されたマニの手を取り、かつて彼から賜った古の散弾銃を握らせた。
「今度はお前に守られる側になるとはな」
信者の数は少なくとも、信仰心は負けてはいない。マニは愛銃――ウィンチェスター・プレミアムを誇らしげに構えた。
→見捨てる
一度マニを信仰していたとはいえ、今更彼に荷担する必要性を全く感じなかったあなたはマニの手を振り払った。新たな神を信仰すればより良いアーティファクトが貰えるかもしれない。――マニは邪魔だ。
「……そうか。残念だ」
あなたはマニのかつての愛銃を誇らしげに構えた。畳む
マニの元信者の話 #マニ
「やってくれたな。裏切り者め!」
愛する信者の改宗に、マニは激昂した。忠実なるシモベ、信者の模範とまで言わせた信者は溜め込んだ弓を一心不乱に祭壇へ捧げていた。
「限りある短い生を私の元で消費していればいいものを、よりによって、あのルルウィに! これは私に対しての辱めか。お前に与えた私の全てを持ち去るのか!」
その元信者は神の声を聞くエンチャントを外したのだろう、マニの声に耳を貸さない。
祈りを捧げ、新たに下僕を賜ったルルウィ信者を見下ろしながら、クミロミがマニの肩を叩く。
「あの信者は、下僕を牧場で飼い殺しにするつもりだよ。僕の妖精の一匹は、あの女たらしに売られていったんだ……」
その言葉の通り、ルルウィの下僕の黒天使は牧場へと送られた。元より、この信者は神を『信ずる者』『信じ仰ぐ者』ではなかったのだ。畳む
「やってくれたな。裏切り者め!」
愛する信者の改宗に、マニは激昂した。忠実なるシモベ、信者の模範とまで言わせた信者は溜め込んだ弓を一心不乱に祭壇へ捧げていた。
「限りある短い生を私の元で消費していればいいものを、よりによって、あのルルウィに! これは私に対しての辱めか。お前に与えた私の全てを持ち去るのか!」
その元信者は神の声を聞くエンチャントを外したのだろう、マニの声に耳を貸さない。
祈りを捧げ、新たに下僕を賜ったルルウィ信者を見下ろしながら、クミロミがマニの肩を叩く。
「あの信者は、下僕を牧場で飼い殺しにするつもりだよ。僕の妖精の一匹は、あの女たらしに売られていったんだ……」
その言葉の通り、ルルウィの下僕の黒天使は牧場へと送られた。元より、この信者は神を『信ずる者』『信じ仰ぐ者』ではなかったのだ。畳む
ノエルとグウェンの赤い花の話 #ノエル #グウェン
どうしてこんなところにいるのだとあなたは感じた。彼女とはかけ離れたこんな汚い町の酒場に、なぜ、グウェンが。白い髪の少女はあなたを見つけると昔のようにあなたに駆け寄ってくる。足元に広がっていた酒なのかそれ以外なのか区別の付かない液体が跳ねて床に範囲を広げる。
「赤って好きな色なの」
靴が汚れるのも構わずにその水溜まりを踏み抜き、あなたにしなだれかかり擦れた笑みを浮かべたグウェンに、あの頃の無邪気な面影はない。服の下に隠しきれない年頃の少女にしてはあまりにも多すぎる傷はあなたの目を引いた。あなたが戸惑っていると、爆弾魔の少女が「また会ったわねヒトゴロシくん。その子は新入りよ」とあなたをテーブルへと招く。
ヒトゴロシ、爆弾魔、無邪気だった少女がテーブルを囲む。あなたはグウェンがなぜここにいるのかを切り出せずにいたが、彼女が自ずから語り始めた。
「私が冒険者に襲われても誰も助けてくれなかった。人拐いに遭っても気にも留めなかった。無関心だった。……だから、私も見たいな。あの赤い花」
赤い花。パルミアに咲かせたそれは、ヨウィンからはさぞ美しく見えただろう。ノエルの入れ知恵かは判断できないが、グウェンがあの花を理解していることよりも、無力な彼女が冒険者の慰み物になっていたことが許せなかった。タイミングを見計らったようにノエルが例の物を用意し一言添える前に、あなたはそれを売ってくれと口にしていた。
「あたしの時より判断が早いじゃないヒトデナシくん。よっぽどこの子が気に入ってるのかしら?」
昔よりも金に余裕はある。赤い花を咲かせるのもこれで二回目になる。ノエルに従ってあの宿屋に仕掛けた時と違い、自分の意思で選んでみせた。
「冒険者さん、もうひとつお願いがあるの」
核爆弾を手にしたあなたをグウェンは上目遣いで見つめ、あの頃のような無邪気な笑みで『お願い』をした。
「サンドラさんのケープも欲しいな」畳む
どうしてこんなところにいるのだとあなたは感じた。彼女とはかけ離れたこんな汚い町の酒場に、なぜ、グウェンが。白い髪の少女はあなたを見つけると昔のようにあなたに駆け寄ってくる。足元に広がっていた酒なのかそれ以外なのか区別の付かない液体が跳ねて床に範囲を広げる。
「赤って好きな色なの」
靴が汚れるのも構わずにその水溜まりを踏み抜き、あなたにしなだれかかり擦れた笑みを浮かべたグウェンに、あの頃の無邪気な面影はない。服の下に隠しきれない年頃の少女にしてはあまりにも多すぎる傷はあなたの目を引いた。あなたが戸惑っていると、爆弾魔の少女が「また会ったわねヒトゴロシくん。その子は新入りよ」とあなたをテーブルへと招く。
ヒトゴロシ、爆弾魔、無邪気だった少女がテーブルを囲む。あなたはグウェンがなぜここにいるのかを切り出せずにいたが、彼女が自ずから語り始めた。
「私が冒険者に襲われても誰も助けてくれなかった。人拐いに遭っても気にも留めなかった。無関心だった。……だから、私も見たいな。あの赤い花」
赤い花。パルミアに咲かせたそれは、ヨウィンからはさぞ美しく見えただろう。ノエルの入れ知恵かは判断できないが、グウェンがあの花を理解していることよりも、無力な彼女が冒険者の慰み物になっていたことが許せなかった。タイミングを見計らったようにノエルが例の物を用意し一言添える前に、あなたはそれを売ってくれと口にしていた。
「あたしの時より判断が早いじゃないヒトデナシくん。よっぽどこの子が気に入ってるのかしら?」
昔よりも金に余裕はある。赤い花を咲かせるのもこれで二回目になる。ノエルに従ってあの宿屋に仕掛けた時と違い、自分の意思で選んでみせた。
「冒険者さん、もうひとつお願いがあるの」
核爆弾を手にしたあなたをグウェンは上目遣いで見つめ、あの頃のような無邪気な笑みで『お願い』をした。
「サンドラさんのケープも欲しいな」畳む
ロイターとクラムベリー中毒のヴェセルの話 #ロイター #虚空さん
終わりの時は案外呆気なく訪れた。
「私はもう長くない」
ヴェルニースの酒場でクリムエールを飲みながら、何ということも無いようにヴェセルが口にしたのを、ロイターは酒を呷る手を止めた。
「何だと?」
「私は長くないと言った」
「また妙な幻覚でも見ているのか。薬は止めろとあれほど言ったはずだ」
一度薬漬けで朦朧としたヴェセルを見かけてからは、ロイターは何かと彼を監視するようになったのだ。うわ言のようにエレアの娘の名を呟き、虚ろな瞳で虚空を見つめるかつての友、戦友と呼べるヴェセルがこれ以上落ちていくのを、ロイターは見ていられなかった。
「薬はもう止めた。だが……」
遅すぎたのだ。不摂生な生活に加え、クラムベリーだけでなく、違法、合法、あらゆる麻薬に手を出したヴェセルの体は、耐え切れなかった。見えないところは既に病に犯され蝕まれていた。徐々に死に至る病を。
「だから、何だ。また貴様は逃げるのか?」
アテランでその背を追い、戦場で肩を並べ、張り合ってきた。ロイターは彼と剣を交わすことに燃え、ある種の生き甲斐と化していた。しかしヴェセルは、一度も負けを譲らずにひっそりとザナンを去った。ヴェセルが失踪してからは、ヴェセルよりも上の地位に就き、こうしてザナンの皇子の警護を任されるまでの立場となったが、張り合う相手を失った今、この勝利は無意味だ。
彼が妹のように思っていたエレアの娘を失ってからのヴェセルは、抜け殻のようだった。地位も名声も何もかもを呆気なく捨ててザナンを去った時は、とうとう死を選んだものかと思っていたが、こうして生きていただけでも、ロイターは嬉しかったのだ。
「俺と勝負しろ、ヴェセル。薬に殺されるくらいなら俺が殺してやろう」
しかし、再会したヴェセルはわずかな面影だけを残して変わり果てていた。白き鷹はもう羽ばたく翼も持たず、絶望を吸い取ったように黒く鈍く輝く剣を携えて虚空を見上げるのみ。
聞けば現実から逃げるように、悪夢から逃れるように、クラムベリーの煙を吸っては依頼をこなして今日を生きるためだけの金を稼いでいたらしい。生き延びたところで、その先に待ち受けるのは果たして希望はあるのが疑わしい、不安定な毎日。その上病ときたものだ。
「変わらないな」
「貴様……」
「そのまま、変わらずにいて欲しい」
ふっとヴェセルが笑う。今も昔も張り合って、何かと突っかかってきたロイターに今は憧れさえ感じるのだ。昔と変わらずに、対抗し、反発するロイターに。ヴェセルはテーブルにいくらかの金貨を置いて立ち上がった。
「ヴェセル! これ以上の勝ち逃げは許さんぞ!」
騒がしい酒場が一瞬静まり返るほどに響いたロイターの声を背に、ヴェセルは戸を潜る。そうしてひっそり「許せ」と呟いた。畳む
終わりの時は案外呆気なく訪れた。
「私はもう長くない」
ヴェルニースの酒場でクリムエールを飲みながら、何ということも無いようにヴェセルが口にしたのを、ロイターは酒を呷る手を止めた。
「何だと?」
「私は長くないと言った」
「また妙な幻覚でも見ているのか。薬は止めろとあれほど言ったはずだ」
一度薬漬けで朦朧としたヴェセルを見かけてからは、ロイターは何かと彼を監視するようになったのだ。うわ言のようにエレアの娘の名を呟き、虚ろな瞳で虚空を見つめるかつての友、戦友と呼べるヴェセルがこれ以上落ちていくのを、ロイターは見ていられなかった。
「薬はもう止めた。だが……」
遅すぎたのだ。不摂生な生活に加え、クラムベリーだけでなく、違法、合法、あらゆる麻薬に手を出したヴェセルの体は、耐え切れなかった。見えないところは既に病に犯され蝕まれていた。徐々に死に至る病を。
「だから、何だ。また貴様は逃げるのか?」
アテランでその背を追い、戦場で肩を並べ、張り合ってきた。ロイターは彼と剣を交わすことに燃え、ある種の生き甲斐と化していた。しかしヴェセルは、一度も負けを譲らずにひっそりとザナンを去った。ヴェセルが失踪してからは、ヴェセルよりも上の地位に就き、こうしてザナンの皇子の警護を任されるまでの立場となったが、張り合う相手を失った今、この勝利は無意味だ。
彼が妹のように思っていたエレアの娘を失ってからのヴェセルは、抜け殻のようだった。地位も名声も何もかもを呆気なく捨ててザナンを去った時は、とうとう死を選んだものかと思っていたが、こうして生きていただけでも、ロイターは嬉しかったのだ。
「俺と勝負しろ、ヴェセル。薬に殺されるくらいなら俺が殺してやろう」
しかし、再会したヴェセルはわずかな面影だけを残して変わり果てていた。白き鷹はもう羽ばたく翼も持たず、絶望を吸い取ったように黒く鈍く輝く剣を携えて虚空を見上げるのみ。
聞けば現実から逃げるように、悪夢から逃れるように、クラムベリーの煙を吸っては依頼をこなして今日を生きるためだけの金を稼いでいたらしい。生き延びたところで、その先に待ち受けるのは果たして希望はあるのが疑わしい、不安定な毎日。その上病ときたものだ。
「変わらないな」
「貴様……」
「そのまま、変わらずにいて欲しい」
ふっとヴェセルが笑う。今も昔も張り合って、何かと突っかかってきたロイターに今は憧れさえ感じるのだ。昔と変わらずに、対抗し、反発するロイターに。ヴェセルはテーブルにいくらかの金貨を置いて立ち上がった。
「ヴェセル! これ以上の勝ち逃げは許さんぞ!」
騒がしい酒場が一瞬静まり返るほどに響いたロイターの声を背に、ヴェセルは戸を潜る。そうしてひっそり「許せ」と呟いた。畳む
*tick*
「やってくれたな。裏切り者め」
*tick* 止まった時の中、自身の足音だけが鳴る空間に一人取り残されたマニは銃に弾を込めた。
「私のシモベ――と呼ぶのもこれで最後か」
*tick* 模範的な信者は数多くいたが、最愛のシモベだと囁いたのはただ一人であった。それが、こうもあっさりと裏切るとは。静寂に撃鉄を起こす音が響き、銃口はシモベの心臓を狙う。
「共に過ごした時は刹那に等しかったが、私はお前を……」
*tick* 静止した時の中では聞こえるはずもないが、口にすることで整理を付けておきたかったのかもしれない。しかしそれを告げる前に、時は再び動き出した。一瞬にして目の前に現れた神に凍りつく間も与えずに引き金を引く。シモベは何が起きたか理解出来ぬまま死ぬだろう。
宝玉に、ウィンチェスター・プレミアム。もうマニがこのシモベに与えられるものは無い。だから裏切られたのか、得る物を得て去ったのか。今となっては分からないが再びこちらを振り向かせ繋ぎ止めることが出来ないのであれば、こうするしかない。
「……私も、甘いものだな」
裏切り者の粛清と言うべき行動であるにも拘らず不思議と恨みは抱かなかった。怒りも無い。ただ虚無だけがマニの心を侵していた。畳む