No.134

止まった時の中のマニの話 #マニ

 *tick*
「やってくれたな。裏切り者め」
 *tick* 止まった時の中、自身の足音だけが鳴る空間に一人取り残されたマニは銃に弾を込めた。
「私のシモベ――と呼ぶのもこれで最後か」
 *tick* 模範的な信者は数多くいたが、最愛のシモベだと囁いたのはただ一人であった。それが、こうもあっさりと裏切るとは。静寂に撃鉄を起こす音が響き、銃口はシモベの心臓を狙う。
「共に過ごした時は刹那に等しかったが、私はお前を……」
 *tick* 静止した時の中では聞こえるはずもないが、口にすることで整理を付けておきたかったのかもしれない。しかしそれを告げる前に、時は再び動き出した。一瞬にして目の前に現れた神に凍りつく間も与えずに引き金を引く。シモベは何が起きたか理解出来ぬまま死ぬだろう。
 宝玉に、ウィンチェスター・プレミアム。もうマニがこのシモベに与えられるものは無い。だから裏切られたのか、得る物を得て去ったのか。今となっては分からないが再びこちらを振り向かせ繋ぎ止めることが出来ないのであれば、こうするしかない。
「……私も、甘いものだな」
 裏切り者の粛清と言うべき行動であるにも拘らず不思議と恨みは抱かなかった。怒りも無い。ただ虚無だけがマニの心を侵していた。畳む

二次創作,NPC,掌編