No.140

古書物解読の話 #イズミ #deflayh_pc

 机に向かった主が虚ろな目をして古書物を眺めているところに呼び出された防衛者は「それ、どう解読したらいいわからない」と渡された本を受け止めた。脆い紙を金具で留めただけの、辛うじて本としての形をしているものだった。
「魔術の類いに関してはレオノアが詳しいのでは?」
「いいのいいの。詳しいといったって読まなきゃいけないのは私で、理解しなきゃいけないのも私」
 第一レオノアの話はわけわかんないのよ。赤髪の主が机に突っ伏したまま答えた。防衛者の手の中の古書物は今までのものより薄い。ページを捲れば小さな文字が所狭しと並んでいる。
 文字の並びを見るに古い東洋のものらしい。挿絵でデフォルメされた人間の裸体が躍っていた。
「薄いからって侮ってた。絵は裸ばかりで、色んな部分が隠されている。内容がわかるようでわかりたくない」
 この薄い本が性典かただのエロ本かの区別がつかず、これ以上の解読が必要なのか判断に迷うものだった。
「全く変人っていうのはわけわかんないものばっかり残すからたちが悪いわ」
 主は手袋をごみ箱に放り捨て大きなため息をついた。後に《ウ=ス異本》と名付けられる一連の東洋の古書物は、文献不足の魔術士ギルドのメンバーを大いに悩ませることになる。畳む

二次創作,冒険者,掌編