No.126

あなたのお題は「止まらない吟遊詩人」です!できれば作中に『猫』を使い、迷える魔術師『レントン』を登場させましょう。-http://shindanmaker.com/331820 #shindanmaker #レントン

 冬も過ぎたと思われたが未だ肌寒い風が頬を撫でる昼下がり。レントンの生きる理由の一つであるレイチェルの絵本は既の興味から失われていた。しかし死ぬ理由も見つからないまま仕方なくレントンは佇んでいた。魔法店があり、癒し手がいて、魔術士ギルドへの入り口があるこの場所は人の出入りが激しい。静まることのないこの場所はまるで濁流の中に身を潜めている心地だった。おまけに吟遊詩人が朝な夕なグランドピアノを演奏しては聴衆に石を投げられている。少なくともレントンが見ている間、吟遊詩人が最後まで演奏しきったことはない。
「うるさい!」
 またも這い上がった吟遊詩人が誰かの投石でミンチになった。
 何故この吟遊詩人はこうまでして演奏しているのだろう。吟遊詩人が演奏しているのは猫を踏みつけてしまうという子供でも弾けるような基礎的で冒涜的な曲だ。全く才能の片鱗を感じられない軽い音は場違いも甚だしく、なるほど聞いているだけで人を苛立たせるような演奏だった。三日に一度聴くその演奏は、この吟遊詩人を意識し始めた頃に比べてわずかではあるが上達の兆しは見えてきている。しかしたった三日に一度のわずかな間の一曲。いつになったらこの演奏は終わるのだろう。いつまで飽きずにこの吟遊詩人は演奏していくのだろう。そう思うと途端に苛立たしさが生まれた。もしこの吟遊詩人が最後まで演奏しきったその時は、「ブラボー」とでも言いながら石を投げてやろう。そうすればもう死んでもいいかな。レントンはどんよりと暗い顔をしたまま吟遊詩人の血痕を見やった。レントンは『猫ふんじゃった』の終わりを知らなかったのだ。畳む

二次創作,NPC,掌編