No.121

ロミアスをペットにした話 #ロミアス

 ロミアスをペットにしてしばらく経った。ロミアスを傷つけ、何度も復活させ、手篭めにしたあなたをロミアスは恨んでいるだろう。しかしペットという制約上、ロミアスはあなたから離れる事はできない。ロミアスはわが家の中では紐を解かれ、自由にする事ができる。あなたはロミアスに今日の夕食を作る事を命じた。
「私はいつでも君を殺すことができるのだが、それでもいいのなら」
 相変わらず反抗的である。
 ロミアスはノースティリスに来たばかりで右も左もわからないあなたに乞食の死体を食べさせた事がある。今はもう、この世界を生き抜く事ができるあなたに妙なものを食べさせる事はできない。あなたはその料理が何なのか理解できるし、食べない選択もできる。
「私に何をさせたいのか全く理解できない。だが、これが主人となる君の命令だから渋々従ったまでだ」
 作ったのは卵料理と、ヨウィンで採れた野菜のシンプルな料理だった。はなから料理の巧拙を期待してなどいない。あなたは上品なテーブルの上に並べられた料理に手を伸ばした。
「――おいおい、冗談だろう?」
 些か緊張感を孕んだ、しかし聞き慣れた言葉と共にロミアスはテーブルクロスを思い切り引いた。クロスごと床に流れ落ちて叩きつけられる食器の音が響く。意図が分からず困惑するあなたの目の前の、何も無くなったテーブルの上にロミアスは薄っすらと色の付いた液体が入っている小瓶を置いた。
「毒薬ではいかないが、麻痺のポーションを少量混ぜておいた。あのまま食べていたら軽い痺れくらいは引き起こしていただろう。私は食事に薬を混ぜる考えに至る程度には君が嫌いだが、君は何故私を信じるんだ?」
 これから背中を守ってもらうペットだからだと答えると、ロミアスは「君はもう少し人を疑え」とだけ言うと食器の破片を拾い集める。腰を浮かせたあなたを「これは私の仕事だ」とロミアスは留めるが、しかしあなたは席を立ち軽傷治癒のポーションを手渡した。料理の残骸と共に、鮮血が滴り落ちている。
「……ああ」
 まるで気が付かなかったとでも言いたげに、ロミアスはポーションを受け取った。ロミアスがポーションを口にする間に、あなたはまだ原形の残っていた卵料理を口に運んだ。
「浅ましいことをせずとも、まだ料理は残っている」
 拾い食いくらい、ロミアスと出会ったときに一度経験したのだからこれくらい平気だというのに。ロミアスの手料理は、優しい味がした。畳む

二次創作,NPC,掌編