あなたは《機械のマニ》の狂信者だ2 #マニ続きを読む あなたは地雷犬を従えアクリ・テオラを訪れた。 アクリ・テオラを廃墟にされた時から日に日に信仰を失いつつある機械の神は、あなたに反応することすら面倒だとでも思っているのか静かにそこで息をしていた。捧げられる彼の敬虔な信者の死体を全身に感じながら、続く痛みと虚無感に身を捩じらせもしていたが、今やそれすら億劫なほどに衰弱している。 顔を伏せたままのマニの顎を《ウィンチェスター・プレミアム》で掬い視線を合わせると、銀の髪の間から赤い目を覗かせてあなたを睨みつけてきた。少し手を出してみれば反抗の意思の片鱗を見せるマニにあなたは満足げに微笑み、祭壇の上で静かにマニを押さえ続ける電子機械に触れる。電子機械は光の中に消え、拘束が解かれたマニが息を詰めるのを感じた。「お前に与えられるものは無い。ルルウィの元にでも行けばいいだろう」 長い間血の巡りが滞ったマニの冷たい手を取り、癒しの光を翳した。マニはされるがままにあなたの治療を受けている。結果は見えている抵抗に価値は無い。あなたを殺してもマニの行き着く先は定められているのだ。 何も与えられずとも得ることはできることを証明するかのようにあなたは銃をマニへ向けた。驚愕も安堵も浮かべずマニは銃に触れ、銃口を自身の心臓へと逸らせる。「殺すなら、ここを狙え。だが……」 突きつけられた《ウィンチェスター・プレミアム》は引き金が引かれる前にマニの手の中で手品のように崩壊した。「《ウィンチェスター・プレミアム》……随分と私の銃を気に入ってたようだが、それも今回で終わりだ」 あなたに歯が立たないのであれば、それ以外を狙えばいい。主の危機を察したのか横から飛び掛った地雷犬があなたとマニを引き離す。かつてのマニなら不意打ちでも撥ね返すことはできたが、この生物を支えられないほど弱い神と化している。マニは固い床に倒れ込みながら先ほどと同じように機械仕掛けの犬を分解しようとし、地雷犬は最期の足掻きに地雷を落とそうとしている。 あなたは地雷の圏内から離れ、背中で爆音を聞いた。そう強くは無い地雷といえど流石に軽傷ではいられないだろう。焼けた火薬と鉄と血の混ざる戦場と同じ臭いがする。爆風に晒されそれでもまだマニは生きていた。しかし無事に済む筈もなく、服の下に血に染まった生身の体が見えている。「……やるじゃないか。今度はペットを利用するとは」 元よりグラビティ目当ての使い捨てのペットだ。あなたも重力操作の巻き添えにするこの機械に期待はしていなかった。衰弱したマニに対しては思いの他役立ってくれたようだが。それに加え、呪われた肉体・精神復活や下落など、喉の渇きをありとあらゆるポーションで癒され、逆に体は蝕まれていたことをマニは知っているだろうか。癒したばかりだった血塗れの腕で起き上がろうとするも、未だ続く重力がそれを阻んでいた。「私がお前に向け、お前が私に向ける感情がどれだけ不要なものか。理解できないお前を理解することが無駄だということは理解できた」 あなたはマニに歩み寄り、床に這い蹲っているその頭を踏みつけ、重力のままに踏み躙った。頭は床に打ち付けられ銀の髪に新たな血が滲む。「一時でもお前を信じた私が愚かだったよ」 マニは瞑目し踏み付けられた頭をゆるゆると振ろうとしていたがそれも儘ならない。何の変哲も無い鉄の拳銃に弾を込め、マニの示した心臓に銃弾を打ち込むとマニは緩やかに事切れた。 ただの死体には興味がない。口にしても腹を満たすだけの肉に、何の価値もない。マニの死体を祭壇に押し付け軽く祈りを捧げると眩い光と共に死体は消滅した。神が神の元に召される。まさか自分自身を捧げられることになるとは思ってもみなかっただろうが。修復できないようにガラクタにされた《ウィンチェスター・プレミアム》。そのパーツを拾い集め祭壇へ捧げる。重い足取りのあなたの側にダンジョンクリーナーが近寄り辺りを片付け始めるのを横目に、バックパックから願いの杖を取り出した。 ――何を望む?畳む 2024.8.28(Wed) 19:43:58 二次創作,NPC,掌編
あなたは地雷犬を従えアクリ・テオラを訪れた。
アクリ・テオラを廃墟にされた時から日に日に信仰を失いつつある機械の神は、あなたに反応することすら面倒だとでも思っているのか静かにそこで息をしていた。捧げられる彼の敬虔な信者の死体を全身に感じながら、続く痛みと虚無感に身を捩じらせもしていたが、今やそれすら億劫なほどに衰弱している。
顔を伏せたままのマニの顎を《ウィンチェスター・プレミアム》で掬い視線を合わせると、銀の髪の間から赤い目を覗かせてあなたを睨みつけてきた。少し手を出してみれば反抗の意思の片鱗を見せるマニにあなたは満足げに微笑み、祭壇の上で静かにマニを押さえ続ける電子機械に触れる。電子機械は光の中に消え、拘束が解かれたマニが息を詰めるのを感じた。
「お前に与えられるものは無い。ルルウィの元にでも行けばいいだろう」
長い間血の巡りが滞ったマニの冷たい手を取り、癒しの光を翳した。マニはされるがままにあなたの治療を受けている。結果は見えている抵抗に価値は無い。あなたを殺してもマニの行き着く先は定められているのだ。
何も与えられずとも得ることはできることを証明するかのようにあなたは銃をマニへ向けた。驚愕も安堵も浮かべずマニは銃に触れ、銃口を自身の心臓へと逸らせる。
「殺すなら、ここを狙え。だが……」
突きつけられた《ウィンチェスター・プレミアム》は引き金が引かれる前にマニの手の中で手品のように崩壊した。
「《ウィンチェスター・プレミアム》……随分と私の銃を気に入ってたようだが、それも今回で終わりだ」
あなたに歯が立たないのであれば、それ以外を狙えばいい。主の危機を察したのか横から飛び掛った地雷犬があなたとマニを引き離す。かつてのマニなら不意打ちでも撥ね返すことはできたが、この生物を支えられないほど弱い神と化している。マニは固い床に倒れ込みながら先ほどと同じように機械仕掛けの犬を分解しようとし、地雷犬は最期の足掻きに地雷を落とそうとしている。
あなたは地雷の圏内から離れ、背中で爆音を聞いた。そう強くは無い地雷といえど流石に軽傷ではいられないだろう。焼けた火薬と鉄と血の混ざる戦場と同じ臭いがする。爆風に晒されそれでもまだマニは生きていた。しかし無事に済む筈もなく、服の下に血に染まった生身の体が見えている。
「……やるじゃないか。今度はペットを利用するとは」
元よりグラビティ目当ての使い捨てのペットだ。あなたも重力操作の巻き添えにするこの機械に期待はしていなかった。衰弱したマニに対しては思いの他役立ってくれたようだが。それに加え、呪われた肉体・精神復活や下落など、喉の渇きをありとあらゆるポーションで癒され、逆に体は蝕まれていたことをマニは知っているだろうか。癒したばかりだった血塗れの腕で起き上がろうとするも、未だ続く重力がそれを阻んでいた。
「私がお前に向け、お前が私に向ける感情がどれだけ不要なものか。理解できないお前を理解することが無駄だということは理解できた」
あなたはマニに歩み寄り、床に這い蹲っているその頭を踏みつけ、重力のままに踏み躙った。頭は床に打ち付けられ銀の髪に新たな血が滲む。
「一時でもお前を信じた私が愚かだったよ」
マニは瞑目し踏み付けられた頭をゆるゆると振ろうとしていたがそれも儘ならない。何の変哲も無い鉄の拳銃に弾を込め、マニの示した心臓に銃弾を打ち込むとマニは緩やかに事切れた。
ただの死体には興味がない。口にしても腹を満たすだけの肉に、何の価値もない。マニの死体を祭壇に押し付け軽く祈りを捧げると眩い光と共に死体は消滅した。神が神の元に召される。まさか自分自身を捧げられることになるとは思ってもみなかっただろうが。修復できないようにガラクタにされた《ウィンチェスター・プレミアム》。そのパーツを拾い集め祭壇へ捧げる。重い足取りのあなたの側にダンジョンクリーナーが近寄り辺りを片付け始めるのを横目に、バックパックから願いの杖を取り出した。
――何を望む?畳む