誰かのための雨

わたしからは何も見えない

今はもう歌わない糸に生かされている
傘・分別・捨て方
気が晴れるまでいいよ
浅すぎる海に薄すぎる潮
独り占めのスペース
空を覆い、顔を覆う
このまま受信していたい
虹、夢、そして匂いが変わる瞬間
今日だけは汚れてもいい靴で
あなたが降られるまでわたしはここにいます

この水をあらわす言葉を知らない
濡れ落ち葉の定義
もう一度水音の鼓動が止んだ
ただのくらやみに戻るだけ
協調性はきみのかたちに欠けています
輪郭をなぞられた花は不機嫌に項垂れる
わたしのための天と線
逆さ吊りの人形は二人目
ただの口実、でしたけど
魔法使いの誕生日
これを恵みと呼ぶならば
摂理は概念を引き裂くばかり
たった今全てを奪われたにすぎない
宇宙の雨は情熱的だってさ
このままだと溺れてしまいそう
ひなたの取り合い
歪んだ水たまりの心象風景
いい天気の基準
行き交う花が萎むまで
まだ止みそうにないから迎えに来て

荷物持ちだろ傘の一本くらいよろしく
雨宿りには広すぎる
流れる時間を忘れさせて
味方と呼びたい今だけは
予定調和のフラグメント
こじつける切欠探し
溶けてくれない飴
暗闇と足音に変わるだけ
音も、声も、視界も、距離も
ただの通り雨って誰に言い訳するんだ
群青の底でため息をひとつ
雨上がりのにおいを忘れたくない
どうしようもない追憶に慣れてしまって
置き傘はもういらないね
水深1cmの姿見の群れ
あしたの涙
境界を跨げない理由を探してた
空気は全てわたしのため息になる
空気は全てあなたのため
洗い流す、無かったこと、それも全て

泣いてるってわかるでしょ
この紫陽花は明日から赤
水が滴ってなくてもいい女
肩と私のどっちを選ぶの
二人分を捻出するのが仕事
馬鹿は風邪引かないを実証して
あったか~いとつめた~いの中間
なるべく出来るだけ急いで早く
空との後腐れのない関係
日差しより先に待ってる
曇天独占禁止法
失われた鰓呼吸
望んでいたハレノヒ
愛していたクモルヒ
あなたの知らない湿度
弾む音に嫌われている
ビニル越しにさよなら
雨の下を覗き込まないで
手がかり無しに泳げない
それでも澄んだ空を望むなら

レインカーネイト
ディライト・デイ・ライト
チル・チル・チル
エンター・ジ・アンブレラ
ウィズ・ミー・クラウディ
プレシピテイシヨン・コールド・ティア
クワイエット・ミストレス
レインボーサークル
ドロップワーク・アフター
グッバイ・サン・シャワー
金糸を紡げばひだまり
ぬるくなったコーヒー
このままの雨間でいて
わたしがいる雨上がり
人々は花を摘んでいく
雨傘はもう日傘相合傘
遣らずの雨ではなくて
たとえまた雨降りでも
生温い風は体温に遠い
繋ぐ夜に雨恋いをする

古い傷の痛みをまだ忘れられない
許されるための言葉を知らない
朝の憂鬱は夕暮れに届かない
流れる時間を巻き戻せない
チョコもうまく割れない
少しの猶予もくれない
君の足跡を許さない
星は雨になれない
影はもういない
雨を止めない
もしも信仰が昔話になっても
心変わりは涙の数だけあった
いつかきみが星になっても
足元で跳ねる泥を忘れないで
たとえ明日が嘘になっても
昨日までの歌を抱いていく
そして地球から青がなくなっても
それはきっと広く、深く
横断歩道の海原に
降り注ぐものだと定義する